【契約時に必要な確認事項と明示するメリット】
雇用した後に「こんなはずじゃなかった」という事例が発生してしまうと、それが職場に対する不信感となります。
他のスタッフに悪影響を与えてしまったり、最悪の場合は「もう辞めます!」ということにもなりかねません。
雇用契約時に、労働条件をきちんと双方確認しそれを文書化することで後で「言った・言わない」を未然に防ぐことが出来ます。
★少し手間のかかることかも知れませんが、長く付き合えるお互いのパートナーを見つけるためにも、明確な労働条件を作成しましょう。
【労働契約書をつくるのに必要な事項】
使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければなりません。この場合、賃金及び労働時間に関する事項その他厚生労働省令で定める事項については、書面の交付により明示しなければなりません。労働条件の明示(法第15条)
労働条件の明示(法第15条)
(絶対的明示事項:書面の交付により明示しなければならない)
- 労働契約の期間労働条件の明示(法第15条)
- 就業の場所、従事すべき業務
- 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間・休日・休暇、労働者を2組以上の分けて交替に就業させる場合における就業時転換に関する事項
- 賃金(退職金、賞与等を除く)の決定・計算・支払いの方法、賃金の締切・支払の時期、昇給に関する事項
- 退職に関する事項
(相対的明示事項:企業にルールがあれば明示する)
- 退職手当の定めをする場合は、労働者の範囲、退職手当の決定・計算・支払いの方法及び支払の時期に関する事項
- 臨時の賃金等及び最低賃金額の定めをする場合は、これらに関する事項
- 労働者に食事、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合は、これに関する事項
- 安全及び衛生に関する定めをする場合は、これに関する事項
- 職業訓練に関する定めをする場合は、これに関する事項
- 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合は、これに関する事項
- 表彰及び制裁の定めをする場合は、種類及び程度に関する事項
- 休職に関する事項
求職者が「聞きたいけど、聞きづらい」確認項目
- 勤務時間はどうなっているの?
- 残業代・休日手当はもらえる?
- 有給はどうなっているの?
- 社会保険や雇用保険は加入できるの?
- 試用期間中の労働条件や、採用・解雇の条件は?
- そもそも、労働契約書はもらえるの?
雇用主が、契約時にやっておきたいこと
- 試用期間を決める
- 労働契約書の作成
書類上では判断できない求職者の能力や人柄、職場との相性や適性を見ることができ、
時間をかけて採用を決めることが出来ます。
お互いの「あってよかった!」を左右する
労働契約書の作り方とチェックポイント
労働条件のお互いの認識のズレを修正し、雇用主さまも薬剤師さんも安心して仕事に専念できるよう、 細かい点も出来るだけ明示されたような契約書を作成しましょう。インターネットには無料でテンプ レートをダウンロードできるところもありますので、それを使用するのも便利です。
参考 リンク:厚生労働省 大阪労働局 労働基準関係法令主要様式集必ず2通作成し、署名又は記名押印したうえ労使双方で1通ずつ保管しましょう。
☑チェック① 雇用期間
- 期間は?(具体的な期日or期間の定めなし)
- 契約更新の有無は?(自動的に更新or更新する場合があるor更新しない)
- 契約更新の判断基準は?
- (契約期間満了時の業務量、労働者の勤務成績・態度、労働者の能力、会社の経営状況、従事している業務の進捗状況など)
☑試用期間中に判断される事項
- 勤務成績
- 出席率や、無断欠勤
- 協調性
- 出書類の不備、経歴詐称提
☑チェック② 就業場所・従事する業務の内容
- 就業場所は一か所?or複数個所?
- 業務の内容が変わる可能性は?
- 配置転換・勤務地変更の可能性は?
- ノルマはある?
☑チェック③ 始業・就業時刻
- 定められた始業時刻と、実際の出勤時間に違いはある?(始業前のミーティングや清掃など)
☑チェック④ 休憩
- 時間はどのくらい?
→→法律では使用者は、労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければなりません。(法第34条)
☑チェック⑤ 所定休日
- 週に何日、何曜日に休みがある?
→→法律では使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日を与えなければなりません。 - また、4週間を通じ4日以上の休日を与える4週4休制も適法になります。(法第35条)
- 年末年始、夏期休暇は?
- 所定外労働(雇用主が決めた休日に働くこと)をさせることがある?
- 休日労働(法定休日に働くこと)をさせることがある?
- 休日の振りかえはある?
☑チェック⑥ 労働時間・残業
- 一日の労働時間は?一週間の労働時間は?
→→法律では使用者は、1週間の各日については、労働者に休憩時間を除き1日について8時間を超えて労働させてはなりません。 また、労働者に休憩時間を除き1週間について40時間を超えて労働させて はなりません。(法第32条) - 一日の労働時間が8時間を超えることがある?(法外残業・時間外労働)
→→法律では使用者は、労働者の過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数を代表する者との書面による協定(時間外労働及び休日労働に関する協定、いわゆる「36協定」)をし、これを所轄労働基準監督署長に届け出た場合は、その協定で定めるところによって労働時間を延長し、又は休日に労働させることができます。
注意
★週の労働時間を37時間にして残りの3時間が積み立てられて40時間になると有給が1日減らされる企業もあった
(週の労働時間が40時間未満の契約時に注意必要)
☑ここもチェック!!
条件 | 割増率 |
---|---|
時間外労働 | 通常賃金の25%以上増。1か月60時間を超える場合は50%増。 |
休日労働 | 通常賃金の35%以上増(1日8時間を超えて働いても同じ) |
深夜労働 (午後10時~午前5時まで) | 通常賃金の25%以上増。 |
時間外+深夜労働 | 通常賃金の50%以上増。 |
休日+深夜労働 | 通常賃金の60%以上増。 |
注意
★週の労働時間が40時間未満の契約時には上記と異なる場合あり(低くなる可能性あり)
★年棒制では1ケ月で何時間まで割増料金を含むかを明記する。
☑チェック⑦ 有給休暇
- いつからもらえる?
- 何日もらえる?
→→法律では使用者は、雇入れの日から起算して6ヶ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、10労働日の有給休暇を与えなければなりません。(6ヶ月間8割以上の出勤で10日の有給休暇を付与) - パートタイマー、アルバイトでも有給はもらえる?
→→法律ではパートタイム労働者であっても、実質6箇月以上勤務すれば有給休暇を与えなければなりません。 - 産前産後休業、育児休業は?
- 介護休業は?
注意
★有給の期限は2年です。消費しないと2年たてば消滅します。会社からの消化提示義務はありません
(順次貯まっていくことはありません。消費しましょう)
☑チェック⑧ 賃金
- 基本賃金は?(月給、日給、時間給、出来高給(基本単価と、保障給)、年棒制の場合は年棒額と、毎月の支給額)
- 諸手当の有無と、その額は?(通勤手当、精勤手当、役職手当など)
- 交通費は?(バイクやマイカーの場合の算定方法は?)
- 懲戒処分にはどんなものがある?その基準は?
- 賃金締切日は?
- 賃金支払い日は?
- 支払い方法は?(現金、振り込みなど)
- 残業代、休日手当、深夜労働の手当は?(チェック⑥「時間外・休日・深夜労働の賃金割増率」参照」
- 昇給は?(時期、基準など)
- 賞与(ボーナス)の有無と、時期・金額は?
- 退職金の有無と、金額は?
☑チェック⑨ 退職・解雇
- 定年制?(何歳まで?)
- 自己都合退職の場合、いつまでに届け出たらいい?
- 解雇になる際の基準は?(無断欠勤など)
→→、解雇の事由等を就業規則に定めなければならない(法第89条)
★ 辞めさせたい場合は告知は1ケ月前。それ以内は1ケ月分保障
★ 会社への退職希望告知は通常は1ケ月前。法律的には2週間
注意
★退職意思表示したい人間は、社内規定で1か月以上前と書かれていても、法律では、民法627条1項では雇用契約の解約は申出から二週間経過後に契約終了になる。退職願いを提出して二週間が経過すれば、使用者の承諾に係らず退職できる。
☑チェック⑩ 社会保険、雇用保険、労災
- 社会保険の加入は?(厚生年金、健康保険 など)
- 雇用保険の適用は?
- 労災の補償は?
<<こんなことも保障されています>>
パートタイマー(アルバイト)の雇用・労働条件
パート労働法、労働基準法、雇用保険法、労災保険法などでは、 パートタイマーの雇用・労働条件について以下のようなことを定めています。 「パートだから」とはいえ、有給休暇や雇用保険の加入などは国から認められた制度ですので 、事前に雇用主さまと薬剤師さんとで確認しておきましょう。
- 採用時に労働条件通知書を交付する
- 正社員なみパートに対しては、賃金、労働時間、待遇について正社員と差別してはならない
- 勤務日数に比例した年次有給休暇を与える
- 健康診断を実施する
- 労災時の補償を行う
- 該当者には、産休、育児・介護休業等を与える
- 労災保険、雇用保険の加入手続きを行う
- 契約期間の中途で解雇する場合には、30日以上前に予告する